5 クラム(Clam)
 1990年以降、3−3−1ゾーンと呼ばれていたものが改良されトリッキーなディフェンスとして使われた。1994年のボストンのUPA優勝時に注目され、その後、マンツーマン、ゾーンと並んでアルティメットのベーシックなディフェンス戦術となった。
Clamという名前のとおり、相手のレシーバーを挟みこんでディフェンスする。フェースガードも広義のクラムにあたる。
レシーバーは潜在的にスローワー以外の6人となるが、実際にアクションを起こすプレーヤーは1名または2名であり、他のプレーヤーはパスレシーブに適したポジションにいないという考え方を基本としている。レシーバーをサンドイッチにして守ることでパスコースをつぶし、ターンオーバーを狙う。相手が、マンツーマンの攻め方で縦に直線的に動く場合は非常に効果的だが、広がってゾーンのような形で攻めてきた場合は脆い。試合の中での使うタイミングと、プレッシャーの強さ、ポーチのタイミングによっては、他のどのディフェンスよりもターンオーバーを狙える強力な戦術である。
 
 

スタートの状況は図の通り。多くの場合はフォースフォアハンドになる。
1にはマーカーの強い人が、2と3は基本的にマンツーマンでつく。4,5,6の各プレーヤーでミドルとディープを囲むように守り、すべてのロングパスに対して7が対応する(at the start of the Clam)。この状況ではマンツーマンと区別がつかない。
 (figure2)ではハンドラーcがカットするが3に抑えられ、fがミートを5に抑えられている。このとき4のポジションがフォアハンドよりに修正されている点に注意。

 (figure3)はハンドラーbがディスクとレシーブしたところ。QBaはミドルゾーンへクリアしようとしている。パスをもらえなかったハンドラーcはディープカット。ディープfもパスがもらえずスタックへ戻っている。dとgもスタックへ戻る。5はディスクとcの間をチェックし、7は縦奥をケアして少しポジションを縦側へずらしている。3と4でdの動きをチェックし、ファーサイドの6はgとeを視野に入れている。
 (figure4)ではaとcがハンドラーカットを試みるが1と3に抑えられている。いったんスタックに戻ったfが再度縦側にカットしてくるが5が抑える。eはディープへカット。4と6はカウントが詰まってきたらそれぞれgとdをタイトに抑える。この状況ではすべてのオフェンスプレーヤーが抑えられてしまっている。
 図のすべての状況において4,5,6,7はオフェンスプレーヤーをサンドイッチにしている点に注意。囲めている限りクラムは成功である。オフェンスが広がりきってしまうとクラムの効き目はなくなる。マンツーマンと巧みに使いこなすと効果が高い。

6 ディフェンスの戦略
 戦術としてのディフェンスのパターンは以上のとおりである。しかし、どんなにバリエーションが豊富でも相手にわかってしまうようであれば効果は半減する。強力なオフェンスを持っているチームに対してはどんなディフェンスなのか悟らせないように慎重にスタートすべきである。ゾーンをケアして広がった相手に対してマンツーマンをすればスペースがないぶん非常に有利になる。マンツーマンと思っていた相手に対してクラムをすれば思うつぼだろう。だが、最初からクラムだとわかっていればスタックを崩すなり対策は立てられる。簡単に破られる可能性が高い。
 ディフェンスはいくつかのバリエーションを持ち、得意とするディフェンスを活かすために常にいくつかの手を相手に見せておく必要がある。それがたとえ簡単に破られたとしても(クラム、ジャンクは往々にして簡単に崩される)得意のディフェンスをより効果的にするための重要な布石となる。
 
 1996年の世界選手権決勝で、アメリカはスウェーデンに対して少なくとも5種類のディフェンスフォーメーションを使い、3回続けて同じディフェンスを使ったことは1度もなかった。また、ディフェンスチームは12回のターンオーバーに対し7回ブレイクポイントを奪った。1セットに2回のターンオーバーがあったときは必ず点に結び付けており3回ターンオーバーを起こしたセットはなかった。


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