はじめに

 世界も狭くなった。定期的にイタリアの教育省からも毎日のように連絡が入るし、国内と同様、いやそれ以上のメールが海外からやってくるようになった。どの国もインターネットの教育利用が行われつつあるからであろう。まさに世界同時進行といえる。全くインターネットは「距離の問題」すぐに解決してしまう。

 日本でも様々なネットワーク支援施策がなされ、世界を視野にいれた授業が多く展開されるようになると考えられる。

 しかし時差の問題は解決不能で、相手の時間を意識してメールのやりとりをしなくてはならない。今回取り組んだテーマとしてリアルタイムの交信があるが、時間調整打ち合わせには多くの時間をさかざるをえなかった。

1 定例会議の必要性

人間関係

 
これは同時に数地点で打ち合わせを行うための準備段階のメールである。アメリカ東部、ハワイ、日本での授業の打ち合わせのためのものである。このようなメールが定期的にやってくる。

On Thu, 25 Feb 1999, Shimizu, H wrote:――――

  Are you planning the CUSesMe testing on March 15 in the US? (I will come back from Boston on 14

  If so, may I ask what time the test will be. I would like to make a  reservation.

 ----@hawaii.edu  wrote:―

Candace will not be available MArch 1 or 2, which means we should postpone the CUSeeMe session until after March 14. Would March 15 work?     
このような事前の準備が数回やりとりされ、実際のリアルタイムの打ち合わせとなる。このようなやりとりの中で、担当者はお互いの熱意とプロジェクトへの意欲を相手側に知らせることとなる。また生徒参加の場面を考えた時、教師間での体験がそのまま指導へと結びついていく。現在4月からの授業に向けテーマ、Cu-SeeMeの活用の場面、さらには最終的なプロダクトをどのような形で残すかをテーマに数地点同時のセッションで意見がやりとりされている。(図1)3地点・打ち合わせ

「ネット」ワークの認識

 国際交流はじめ、国内の交流においてもインターネットの活用が行われ、多くの事例が出され始めつつある。しかし点と点の交流、すなわち一校対一校の交流がほとんどである。

ネットワークは文字どおりネットである。数校と同時にプロジェクトを推進していくことができるところに特徴がある。

今回の取り組みは「国際共同授業」をネットワークで(数校での取り組み)実践していくための手だてを探ってみた。

2共同国際授業の手順

事前の打ち合わせ

メーリングリストとの連携

定例会議セッション前はメーリングリストの活用によって、打ち合わせが行われた。時間の設定には苦労したが、その分当日の内容は濃いものとなった。Cu-SeeMeだけでなくWeb-chat、Chatなどの機能を使い打ち合わせを行った。

意識の中に

 インターネットが世界を狭くした。それは事実であるがやはり文化も違う海外の人との共同授業には「誠意・熱意」が必要である。時間を調整し、リアルタイムセッションを行うことは打ち合わせにとどまることなく、お互いの信頼関係を作るり上げる上で大きな効果をもたらした。


 しかし、突如校内の打ち合わせが入ってしまったり、準備も台無しになることも起きてしまった。校内の理解を得つつ推進していくことも課題として残った。

授業と平行しつつ

 事前の打ち合わせの後、共同授業に入っていく。授業の内容は打ち合わせの内容に比例する。当日Cu-SeeMeセッションを行ったり、テーマを持ったwebchatさらにはメーリングリストへの書き込みなど、いろんなツールが利用される。

授業後には授業前と同じ様にリアルタイムセッションが行われる。

特に重要なのは、返信のなかった生徒へのフォローである。

 部活終了後教師と共に遅くまで学校に残り、メール送信をした生徒のメールを相手が読んでおらず、期待した返信が無い等の事態も起きてしまう。これらのフォローのため、また問題解決のために「職員会議」は利用される。

3 打ち合わせに支えられた実践

3.1 ハワイ・アメリカとの交流(理想の学校を作ろう)

 裏側の打ち合わせに支えられて生徒は理想の高校をハワイ大学・ハバーフォード大学日本語学習生徒と論議した。最終的にはそれをWeb上に作り上げ、授業成果として相互に最終段階でパワーポイントを使いプレゼンテーションを行った。この学校は真珠高校と名付けられ、校則、クラブ活動まですべてを網羅したページとなった。日本側生徒にネットワークを意識させるためこのページは現在ハワイ大学に置かれている。

3.1.2 生徒の感想

一緒に共同で作る学校名が「真珠湾高校」となっていたのでちょっとびっくりしました。でも「戦争のイメージがあるから変えてほしい」とメールを出したら、「そんな感覚があるの」と驚いていました。最後には変えてくれました。


未来の学校の校則の所で「麻薬や拳銃を学校に持ち込まない」と出てきたときには驚きました。日本では考えられないことがアメリカでは起きているんだと言うことをかいま見ることが出来ました。(図2)生徒間交流

 

3.2 韓国との交流

 もっとも頻繁に行われたのは韓国との打ち合わせである。韓国とは商業の科目「総合実践」バーチャル取引を行った。また日本語・韓国語共同学習の場面の打ち合わせとしても活用した。

 中でも当然といえば当然であるが、Cu-SeeMeで音声と動画を操作しながら同時にネットスケープ上のソフトも動かし、取引のシミュレーションを行うことができた。(図3) 

3.2.1 生徒の感想

・日本人の私が、英語を勉強するように、韓国の高校でも英語の他に日本語を勉強しているなんて、全然思っても見ませんでした。そうやって日本語を勉強していることを見ると、日本人として何かうれしく感じるものが在りました。

3.3 台湾との交流

 台湾のも日本と同様ネットワーク環境は急速に整備されつつある。

1998年現地を訪問し、交流の打ち合わせをすると共に、事前に日本とリアルタイムセッションで打ち合わせたISDNを利用したテレビ討論会(新年行事を行った)。

図4台湾との実験


4 日本の動きと国際交流

4.1 日常性とインターネット

 現在「総合的な学習」「情報」などに向けて、ネットワークを活用した授業研究が行われているが、ネットワークの広がりは国内での共同授業から生徒の興味関心の高い海外へとすぐに発展していくものと考えられる。

しかしながら一見派手に見える国際交流も「裏側」教師間の綿密な打ち合わせが必要となる。電子メールでの打ち合わせがこれまで主で会あったが、どうしてもトーンダウンして行きがちである。「距離」に甘えて結果が出せないまま終わってしまうことも無いわけではない。「国際職員会議」はこの種の授業には必要不可欠なものと考えられる。

使うながら学習していき、さらにコミュニケーション言語としての英語をまず自ら体験すべきであろう。
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